H 2001年8月号 bice インタビュー

2021年5月4日

2001 bice Nectar アルバム インタビュー

 

photograph by Keisuke Nagase
Styling by Daisuke Iga (KiKi.inc)
Hair & Make up by Atushi Momiyama (PSYCROPS II)
Text by Midori Hayashi

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「不二家のネクターが好きっていうところもあって、一言でいうとトロトロした感じ。流行を追ってないあの缶の雰囲気とかね、こんなに速い時代の中でいつまでも変わらず、何かクラシックで貴重な佇まいの飲み物ですよね。私もそういうミュージシャンになりたいなって」と、初のフルアルバム『Nectar』はbice(ビーチェ)の少女の様な外見を裏切ることのない甘いメロディーとウィスパーヴォイスから湧き上がるイメージにピッタリなタイトル。

厭味なく耳をすり抜ける、良い意味でBGMとして最適な音を生む彼女の優れたところは "雰囲気" 創りのような気がします。それはアルバムになったことでより明確になり、2年半の集大成となる今作は時間をかけた分、ほどよく隙間があって長く定番の1枚になりそうな出来です。

「ウィスパーヴォイスだし、優しくて甘くてっていうイメージがあるかもしれないけど、よく聴いてもらうと大人の孤独というか、サラサラした果汁ではないリアルで露骨なものもあったりするんです。♪~なんてね、って私、結構言い放てないところもあるんですけど、その前のフレーズには本音があったりして……。でもその言い放てないところがbiceのサウンドなのかもしれない。何ていうか、ためらいの音楽。ためらいっていうのは生きて積み重ねられてできるものだったりするから、ためらいの中の恋愛観っていうと分かってもらえるかなぁ、自分の中で完結してしまいがちな恋愛の本音というか。歌詞もちょっとした状況やアイテムをbiceなりの言葉で書いてたりするんですけど、緊張と緩和の繰り返しみたいなところも含めて、ポップスっていうよりもロック・スピリッツに溢れてるんですよね(笑)。でもサウンドをささやかにしてる割にはメロディーだけ抜き出すと露骨だから、そのバランスはすごく考えました」。

甘さだけでなく、確信犯的にチクリと毒を放つのに加えて、やっぱりbiceらしい雰囲気を感じるのはその声なのです。

「納得して声が好きになれたのはここ3~4年なんです。自分が歌う意味を考えたりして、ちょっとずつ形を変えて。悩みは続くと思うけど、今回は自分でもこんなに聴いたアルバムはないってくらい聴いて、そこまで手を掛けるかってくらいやれることは全部やったんで、やっと次にいけそうです」

(H 2001年8月号掲載)

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