bice がこの世を去ってから9年が経ちました。
来年には没後10年を迎えます。なんと月日の流れるのは早いものかと改めて驚きます。
bice が楽曲提供していた『けいおん!!』を手がけた京都アニメーションの痛ましい事件の報道に接するたびに胸が塞がる思いがします。被害に遭われた方々のご冥福をお祈りいたします。
『けいおん!!』では劇中歌の提供でしたが、『まほらば~Heartful days』『きらりん☆レボリューション』では挿入歌だけでなく、サウンドトラックも手がけていましたね。
彼女がラジオ番組にゲスト出演したときに話していたのですが、アニメーションのサウンドトラックでは、まず100曲書いて、追加で90曲、という風に依頼が来るのだそうです。
それぞれの曲が比較的短く、同じモチーフのアレンジ違いなどが含まれるにせよ、それだけの曲数を制作するのは、どんなに優れた曲を書けるアーティストでも、寡作であった場合には難しい仕事だといえます。
また締切りまでに多数の楽曲を仕上げるには、行き当たりばったりというわけには行かないでしょう。
一見すると奔放に感情の赴くままに音楽を作っている女性アーティスト、であるかのように見えて、実は計画性もあり、コンスタントに地道に制作できる人だったのではないでしょうか。
元来サウンド志向が強く、歌詞を書くのが苦手(ファンからするとその歌詞も魅力のひとつなのですが…)、曲を量産できるタイプであると自らを分析していた彼女に、サウンドトラック制作は適性があったのでしょうね。
それに加え、単純に売れる・売れないという尺度とは全く別の、サウンドトラックは作品のストーリー展開になくてはならない要素であるという点で、たとえ作曲者自身にスポットが当たることはなくても「必要とされている」ということを強く感じられるのが、制作する上でやりがいになっていると、幾つかのインタビューでも語っていました。
アニメーションのサントラの仕事の前に、『ムコ殿』(2001年)『きみはペット』(2003年)などのテレビドラマのサウンドトラックも手掛けていましたが、過去のインタビューによれば、将来的に映画音楽の制作もしたいという夢も持っていたようです。
彼女にとっては決して非現実的な夢ではなかったと思いますが、彼女が若くして亡くなったことにより、ファンにとっては彼女の作る映画音楽やその後のシンガーソングライターとしての作品を、夢のように想像で思い描くより他なくなってしまったことは悲しいです。
ファンのできるせめてものこととして、沢山の素晴らしい作品を残してくれたことに感謝しながら、これからも聴き続けてゆければいいなと思います。