揺れる気持ちはいつまでも続いてるから
「Sunday」「SING」とさらにポップ度を増してゆく中島優子の新しい歌がもうすぐ届きます。いつまでも初々しさを忘れないナチュラルな歌声と弾けるビートが新しい季節を呼んでいます。
インタビュー構成: 青野英国
interview text by Hidekuni Aono
シンガーが歌を歌うことを「仕事」と呼ぶのにはなんとなく抵抗があるけれど、初めて仕事をするときのとまどいや不安、そして自信と期待がいりまじったような気持ちは、つきつめて言えば、たとえば入社1年目のOLと同じようなものなのかもしれない。誰もが感じる気持ちを同じように感じられるシンガーが歌うからこそ、その歌はたくさんの人の心に響いていく。
中島優子は、ずっと "初々しい気持ち" にこだわって歌いつづけているシンガーだ。初々しい気持ちというのは、いつも新しいものを感じようとしていないといつか忘れられてしまうものだから、無意識かもしれないけれど、シンガーとしての本能がそこを見つめてしまうのかもしれない。そんな話が聞きたくて、デビューから2年目に入った彼女に、ちょっと昔の話から訊ねてみることにした。
―初めてスタジオで自分の声を録音した時は、緊張しました?
中島 「もちろん!まだデビューする前に、スタジオでデモテープを録った時が一番緊張したかな。はじめてディレクターの方が来たんだけど、もう緊張しすぎて 『ああどうしよう!』 っていう状態。
服装はジーパンにトレーナーで、そんなことも全然気にしてなかった。今思うと恥ずかしい(笑)。今は、服装をちゃんとするのも気持ちとして大切なことだと思ってます」
―スタジオでベストの声を出す方法って、 自分で考えるんですか。
中島 「レシピはない(笑)。とりあえず食事と睡眠かな。いつも 『明日は歌うぞ!』 って思ってるとやっぱりいいみたい。良くない時は、 たとえば休み明けの月曜日の第一声みたいな (笑)、なんか自分の声が違うような気がする、それと同じような感じかもしれない。
今、他のシンガーの人の歌入れを見に行きたいってプロデューサーの人に言ったりしてるんだけど、『見ないほうがいい』 って。『やり方は自分で見つけたほうがいい』 って言われちゃいました」
―確かに、どれが正解というものじゃないですからね。
中島 「自分に要求されてることも考えながら自分の思ってるように歌うということなんですけどね。できるだけそういうふうに頭を持っていきつつ、いざ歌に入ったらもう何も考えないようにしてるんですけどね」
―ニューシングル 『東京ジャングル・ア・ゴー・ゴー』 が6月21日にリリースされますね。
中島 「ゴーゴーっぽいのをやろうってことから始まったんだけど、元々(作曲用の)MACの中にゴーゴーっぽいのがたくさん入ってて。けっこう地味なイメージがあったから初めは戸惑ったんだけど、歌詞をつけて私が歌えば、やっぱり "私色" になるなって思いましたね。
歌詞は、たとえば恋愛ものにしても今まではけっこう真面目なものになりやすかったけど、今回はいろいろ面白い言葉使いとかあって、『失恋したけどふっ切ってやるわ!』 みたいな感じ」
―最近、年の近いメンバーを揃えてライブバンドを組んだらしいですね。
中島 「みんなハイテンションでね、楽しいわあ(笑)。私はバンド経験がそんなにないから、なんか学園祭に出る前って感じ。バックバンドじゃなくて、みんな一緒にやってるっていう気持ちで。
去年の年末のライブは全部座ってやったから、座ってると何か頼ってる部分があるような気がしてて、だから今回は 『さあ、何をしようかな?』 っていう楽しさがありますね」
―ちょっと先の話ですけど、アルバムはどんな感じになりそうですか。
中島 「ギターサウンドは60年代って感じ。12弦ギターを使ったり、レズリー・スピーカーを通してギターの音を出したり。あと、打ち込みで2曲ぐらい自分で構築したアレンジがあるし、ギターでビートルズっぽいのもあったりして。
歌詞は "スクールガール" っていうコンセプトで、"大人になりきれない私" "揺れる気持ちはいつまでも続いてる" みたいな、そういう感じ。きっと、光の中を駆け抜けていくみたいな、明るいアルバムになるんじゃないかな」
(『Time Limit!』 1995年 Summer vol. 004 掲載)