Essay 音楽家が本と出会う時
bice
Slow diveです、いつも。
本を読むのは遅いです。口には出さないけど、つい音読していて「あっ」と思って目で字を追うような。今回はミュージシャン(?)としての本との関係ということですよね。その前に、んー、恋をしている時は恋愛ものって好きだったりするけど、今は、げんなり気味。最近は恋愛が深く絡まない、翻訳ものを手にしている気がします。
今、枕元にあるのは元彼に返し忘れている『ライフ・アフター・ゴッド』ダグラス・クープランド(←トークショーではすっごいまじめな人って感じだったな)。
ダグラス・クープランド著 『ライフ・アフター・ゴッド』 (1996年 角川書店刊) |
で、音とか詞を作る時、最初にインスピレーションを本から受けて始めるタイプじゃないかもしれない。私。なんとなく「曲作ろうかな」とギターとかピアノを手にして徐々に温度感とかテンポ、あとコード感で雰囲気がぼんやり見えてくると本が読みたくなるんです。たぶん、曲とか音を重ねていく時点だと、頭が言葉の世界から離れてしまっているから(メロディーと詞がほぼ同時にできる友達を頭の構造がちがうな、とうらやましく思ったりもする)。私は、音ができてないと安心できない。bice語(トゥルララ・ハァン・スペスペ~みたいなの)でまず録音。その後、新たな恋する気分で本を "じっくり飛ばし読み" するのが楽しい。そういう時って物語のつじつま不明でも言葉がスライドショーのようになっていくんですね。
ほんの例だけど「くさび」って言葉があると「あーなつかしいひびき」と思って、んー「くさびが君の胸にささっていたら」……んー「抜いてあげようか?」と続けてみたり「運命を知るなら……」って言葉が目についたら、んー「私はたぶん、木洩れ日の下を歩いてみよう」かな?っていうふうにメロに乗せたりする(アルバム聴いてね)。それで声にして、キューと胸が鳴る一瞬がほしくて、なんとかbiceはここまで歌ものを作ってきているのです。メロディーと言葉ってリンクしすぎてもつまらないし、ね。でも考えすぎずにいこう。
そうそう、この "じっくり飛ばし読み" って、別に普段でも(特に満ち足りてない時に)してみると、ホント心に感じやすいですよ。足りないところにスポッって。
(ダ・ヴィンチ No. 97 2002年5月号 掲載)
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