Air-ing
作詞・作曲・編曲: bice
All performed by bice
アルバム未収録ながら、隠れた人気曲である bice の 「Air-ing」 は、彼女が当時所属し、後に事務所も兼ねることになる、今は無きインディーズ・レコード会社、Under Flower Records のオムニバス CD シリーズの3枚目、 『Flowers Are Go! Vol. 3』 の中の一曲として1999年に発売されました。
全ての楽器を自身で演奏していることから、この時期の宅録の場であった、実家の離れのプレハブ小屋のスタジオで録音された可能性が高いと思われます。
同じ1999年に他のコンピレーション盤に提供された 「The Girl in the Letters」 (『GRAND CROSS 1999』 収録)や、ジョイ・ディヴィジョンのカバー 「Love will tear us apart」 (『Class of the 80s Green』 収録) にも共通する感触を持ち、『Spotty Syrup』 からの連続性も感じさせる、シンプルな楽器編成による編曲が美しいメロディを引き立てています。
日常の何気ない光景の描写に心が宿り、また心情の描写に風景が感じられるような歌詞も秀逸です。エレキギターの音が、曲全体を包む優しい雰囲気に、歌詞にも表れた苦さと少しの鋭さを加味して一層忘れ難いものにしています。
FLOWERS ARE GO! Vol. 3 |
"The Song in compilation is taken from her brand new release. Coming out this autumn 1999."
上記のような文章がクレジットに添えられており、1999年秋に発売予定であった彼女の(恐らくは)アルバムの構想に含まれていたことが分かります。
*制作中であったメジャーレーベルからのアルバムを指しているのか、それとは別にアンダーフラワーからオリジナル曲による新作を出す予定だったのが流れてしまったのか、はっきりとはこの文章からは分かりません。
1998年12月2日にシングル 『スニーカー』 をポニーキャニオンからの第2弾として発売後、彼女は最初のフル・アルバムの制作に励んでいましたが、制作半ばの1999年中に突如として契約解除されてしまいます。(bice 本人の言によれば、当時同社では大リストラが敢行されていた模様です)
アルバムは、この後に2度のレコード会社移籍とそれに伴う仕切り直しを経て、最終的には 『Nectar』 として2001年に徳間ジャパンから発売されることになるのですが、その前年の2000年、最初の移籍先のアウトグループ・レコード(アルバム発売前の同年秋に解散)から発売の告知がされた時点で、 「Air-ing」 は収録曲リストにはありませんでした。
アルバムには未収録となったものの、「Air-ing」 について bice 自身思い入れがあったことは2001年に放送された番組 BACKSTAGE PASS 中で同曲のライヴ・リハーサルを公開し、曲についての解説を自ら行っていることからも窺い知ることができます。
シングルとアルバムのプロモーション目的での出演で、その収録曲以外をフルで披露するのは珍しく(有名アーティストはこの限りではないのでしょうが)、大変貴重ですね。
フェイドアウトしていたスタジオ・バージョンにはなかった歌詞を足したエンディングになっています。
最後に個人的な思い出を少々。
冒頭で紹介した方の動画は今から10年前の2007年に初めてスライドショー形式で作った動画の再投稿で、初めてアップした当時は他に bice のスライドショーを投稿している方がいなかったせいもあり、大変反響が大きく、世界中の様々な地域・国の方からコメントやメッセージを沢山頂きました。最終的には高評価が40以上になっていたでしょうか。
「この曲が bice の曲の中で一番好き」だと言って下さる方が何人もいらして、英語の曲でなくても、メロディやアレンジ、彼女の歌声の良さが日本国内だけでなく、海外の方々にまで広く伝わるのだなあと実感しました。
現在は Youtube Red の影響で、日本のアーティストの動画はメジャー/インディー問わず海外からは視聴し辛い状況にあるようですし、日本国内の音楽配信サービスは軒並み海外から利用できないこともあり、海外の方向けにどの程度の情報発信をしたらいいのか、当時とは状況が違って迷うところではあります。