私、全然オクテなんですけど(笑)、それだけに
色々考えて。もうアブないんじゃないかと
恋愛体質、情熱過多の女性シンガーが多い中、控えめで夢見がちな女心を歌うbiceがかえって新鮮。オクテな女の子の淡い恋を描いた彼女の新作「ツイオク」は背伸びしてない楽な感じとシルキーボイスが心地いい。
これって、もしかしたら片思い?
そう気付いた瞬間から、電話ができなくなる。会えなくなる。
「会いたい。でも、このままでいいんだけど。そうやって、しょうがないなって、自分の中で当たり前にしていく。とまどいの時期は過ぎて気持ちをフラットにしているときの歌。大人になったら、あまり深く考えちゃいけない恋もある。自分の中にしまっておけば、きれいにいける。今回はそうしようっていう気持ち(笑)」
bice(ビーチェ)の移籍第1弾マキシ・シングル『ツイオク』が6月28日にリリース。アコギの弾き語りから、心が染まるように音が重なっていく。アンニュイだけど温かい。そんな曲を彼女はタイトル曲に選んだ。
「浮遊感をめざして、流れを大切にして書いてますけど、そこにちょっと私のヒネクレ具合を入れる。それと、Bメロの微妙な音からメロディが強くひっぱられていった感じが、自分としては新しかった」
一昨年あたり聴いていたジェームス・イハのテイストもあり。「タイム感が合う」ドラム小松茂と「キャッチーなリフとか弾いてくれる。さすがって感じ」のギター、奥田健介とノーナ・リーヴスも参加。
2曲目「真夏の風はクルクル」は、歌詞を宮原玲という女性と初めての共作に。
「意外な感じになりましたね。情景が見える海や、イケてない女の子のもどかしさをかわいく書きたいなぁって。切実な歌はあまり歌いたくない。
「ツイオク」でも "うっかり" という言葉を入れて、重くならないようにして。こういうほうが、自分にとってはリアルなんですよ」
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シングル『ツイオク』(2000年6月28日発売) 1. ツイオク 2. 真夏の風はクルクル 3. ナイト・ソング |
彼女いわく、「全部片思いな感じ」の最後は、誘ってほしい気持ちに揺れるドライブ中の女の子の歌。歌詞はあえて1番だけでストップした。
「車の中で聴いてるふたりに、"あとは自分たちで考えて" って(笑)。自分でも自由に書けて楽しかった。いろいろターゲットを変えて、"もしもこの人とだったら?" とか(爆笑)。私、悪女じゃないんですけど、全然オクテなんですけど(笑)、それだけにいろいろ考えて。もうアブないんじゃないかと(笑)」
ちょっと控えめな女の子に贈る、夏の恋の3つの物語。「やっぱりレコーディングが好きだな」という久々のbiceの声もとても優しい。
インタビュー: 柳村隆子
(WHAT's IN 2000年7月号掲載)