70年代以降のいわゆるシティ・ポップスを中心に、提唱されているところの「ライトメロウ」な感覚を感じさせる楽曲が収録されている邦楽作品が集められられたディスク・ガイド本です。
2004年に出版された『Light Mellow和モノ669』に、新たに160枚を加えて増補改訂し2013年に出版されたもので、多少前後はしますが概ね年代順に紹介されています。
bice の『かなえられない恋のために』 (2008) は、その新規に加わった160枚の中に入っています。
bice の音楽はどんなジャンルからもこぼれ落ちるようなところがあって、なかなか一般に広く知られてこなかった原因であったかもしれないのですが、そこが逆に色々な間口から聴かれる可能性も秘めているのかと思いますし、この本での紹介のされ方についても、その可能性の一つを示したものといえるでしょうか。
ジャケットに「ライトメロウ対応仕様」というステッカーが貼られた感じとでも言いますか、そういう音楽を求めている人の視界にも bice が入ってくるようになったということかと思います。
ただ、『かなえられない恋のために』の特に後半の流れはライトというよりむしろヘビーで一癖ありますし、もしかしたらこの本をきっかけにアルバムを手にした方は若干戸惑ってしまうほどかもしれません。
このアルバム全体を「ライトメロウ」というキーワードだけでは語り尽くせませんが、「ライトメロウ」な観点から聴き直し、選曲することは十分可能ということなのでしょう。
推薦曲として4曲が挙がっていますが、やはりいずれも前半に収められている曲でした。その中で「100年後にはふたりはいない」が特にお奨めのトラックとなっていたのは一番気持ちよく踊れそうな曲でもありますし(bice 本人もハンドマイクで踊っていましたが 笑) この本の趣旨からすれば納得です。レビューの文章は紙幅が限られている分、もう少し音楽面を優先して書いて欲しかった気がします。
『Light Mellow和モノSpecial -more 160 items-』
著者:金澤寿和 + Light Mellow Attendants
価格:2,160円(本体2,000円+税8%)
ISBNコード:978-4-89977-389-4
A5判/フルカラー/296ページ
発売日:2013-10-25
https://www.rutles.net/products/detail.php?product_id=539
出版社のサンプル・ページ
(巻末の索引が含まれているので、掲載アーティストが一通りチェックできます)
http://www.rutles.net/sample_pdf/389.pdf
本全体としては、あくまでカタログとして DJ 的センスで楽曲を利用することに重きが置かれた本という印象でした。
ここに掲載されている作品の推薦曲を繋ぎ合わせればそれなりに「分かってる」風のものが時間をかけずに楽に作れそうな感じというのでしょうか。
それはさておき、DJ でも音楽通でもない、私のような一般の音楽リスナーにとってもパラパラめくって拾い読みしていると、懐かしさや新たな発見もありで楽しい本ではありました。
こういった書籍は雑誌に比べると長い期間読まれたり参照されるものだと思うので、どのような紹介のされ方であれ、掲載される意味はやはり大きいですね。今まで見向きもしなかった人が作品を手にとってくれる、良さに気づいてくれるという可能性が広がりますから。